大判例

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福岡高等裁判所 昭和58年(う)752号 判決

本件事故の現場は,(1)油山方面から北片江方面へ至る幅員(車道部分)約5メートルのアスファルト舗装道路(中央線が設けられていない。以下甲道路という。)と堤方面から野芥方面へ至る幅員(車道部分)約6.1メートルのアスファルト舗装道路(中央線が設けられた優先道路である。以下乙道路という。)が斜めに交わる交差点であり,信号機もなく交通整理も行われていないこと,(2)甲道路を北進するときは交差点右手前にあるスナック「ルーム」の建物に遮られて右方の見とおしが全くきかず,交差点左手前には一時停止の標識,交差点左先にはカーブミラーが設置されていること,(3)乙道路はほぼ直線道路であって,交差点東側は交差点に向かってなだらかな上り勾配になっているが見とおしは良好であり,交差点に向け西進するとき前記建物のため交差点左方の見とおしはきかないことが認められるところ,被告人は普通乗用自動車(以下被告車という。)を運転して,甲道路を本件交差点に向け北進し,交差点手前で一時停止したあと,再び発進し,他方,乙道路から能野茂雄運転の原動機付自転車(以下,能野車という。)が西進し交差点に向け接近していたことが認められる。

上記の関係状況において,被告車は交差点の手前で一時停止したあと最徐行して左右道路の安全を確認して進行し,交差点内における衝突事故を未然に防止すべき注意義務を負うことはいうまでもなく,被告車が右の注意義務を遵守していれば,右方道路から進行してくる能野車を認めて停止することにより衝突せずにすんだ筈であるところ,当該関係証拠に現われるところによれば,被告車は右交差点の少し手前で標識に従って一時停止したあと,交差点に入る直前に再び停止して前記カーブミラーで右方の道路状況を見たところ,車両を認めなかったのでそのまま交差点に進入し,その後能野車には全く気づかないで,交差点の中央から約1.2メートル北に入った地点で被告車右前部を能野車に衝突させて同人を路上に転倒させ,更に約1.3メートル進行して停車したことが認められる。したがって,被告人が前記注意義務を怠ったことは否定できないところである。

これに対し弁護人の所論は,被告車としては,交差点に車体の前半分(約3メートル)が突出するのでなければ,乙道路を東から交差点に向かって走行する車両を肉眼で見ることはできないとして,交差点に入るに際してはカーブミラーに右車両が映っていないことを確認さえすれば交差点内に進入することが許されるとし,その場合には右車両の方が優先通行権を失い,必ず停止して被告車の通過を待つべきであるというのである。しかし,交通整理の行われていない交差点においては,車両はその通行している道路が優先道路である場合を除き,交差道路が優先道路であるときは,当該交差道路を通行する車両等の進行を妨害してはならないものであり(道路交通法36条2項),前記の如き道路状況の下では,甲道路より交差点に進行するにあたっては,その手前で一時停止するだけでなく,カーブミラーによって右方道路からの車両の有無を見きわめ,車両がないときには最徐行(同法36条3項は,交通整理の行われていない交差点に入る場合,交差道路が優先道路であるときの徐行を義務づけているが,本件の如き具体的状況の下では最徐行して安全を確認すべき義務がある。)して交差点に進入することができるが,その際たえず右方道路の車両の有無に気を配り,これを肉眼で発見したときには直ちに停止して同車両の通過を待ち,その後再び発進するのが相当であって,右所論は採用するに由ない(とりわけ,カーブミラー自体に交差点における優先通行権を左右するような根拠を見出すことはできないのみならず,優先道路を進行する車両の運転者にとって,交差道路を進行する車両の運転者がカーブミラーを見たときの状況等は察知することのできない事柄である。)。

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